本研究は、児童期のスポーツ原体験とパーソナリティ発達との関連を検討することが目的である。 これまで、本研究者はスポーツ系大学において相談活動を実践してきた。そこでの相談者の多くは、スポーツ選手特有の心理的な問題を抱えていた。そして、その問題は家族関係も含めた児童期のスポーツ経験が関連していたことから、児童期にはその後の長きにわたるスポーツとの関わり方に影響を及ぼす重要で印象的な体験(スポーツ原体験)が存在することが考えられた。原体験については、その重要性について指摘されてはいるが、これまでは、原体験の内容と職業志向性や、心理的な安定感情と不安定感情との関連に関わる文献から、原体験の影響が確認されるにとどまっている。また、スポーツ経験における原体験について検討したものはこれまでない。そこで、本研究では、スポーツ原体験を「スポーツ参加に関連するすべての事象を含み、児童期における最も印象的で、かつ重要な意味合いを有すると個人が判断する経験」と定義づけ、スポーツ経験に限定した原体験の構造と内容についての分析を行う。 今年度は原体験に関する文献研究を行い、その後、大学運動選手50名を対象として、児童期におけるスポーツ経験の中でもっとも印象深い出来事についての逐語データを得た。さらに、これらのデータをスポーツ原体験の種類と語りの特徴に沿って分類し、調査用紙を作成した。なお、スポーツ原体験の種類と語りの特徴に沿って分類した一部は国際学会にて発表した。 次年度は、この調査用紙をもとにしたスポーツ原体験についての調査に加えて、スポーツ経験における危機事象についての調査(対象:大学運動選手300名)も同時に行い、データを回収し、調査面接を行いたい。
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