本研究では、小学5年次から中学2年次の子どもたちの体力・身体機能の変化、生活習慣の変容について継続的に調査し、体力推移のパターンとそのバックグラウンドについて分析した。その結果、(1)生活習慣の指標である睡眠時間は、小学5年次から中学2年次にかけて、男女とも有意な減少を示した。一方、運動時間については全体としては男女ともに有意な増加を示したものの、運動習慣のあるものとないものの二極化が見られ、その傾向は特に女子において顕著であった。(2)睡眠時間と運動時間について男女間で比較すると、小学5年次には睡眠時間ならびに運動時間ともに男女間で差が見られなかったが、中学2年次では女子の睡眠時間が男子と比較して有意な低値を示し、男子の運動時間が女子と比較し有意な高値を示した。(3)全身反応時間、握力、長座体前屈、上体おこし、立ち幅跳び、反復横跳び、脚伸展力などの体力要素は小学5年次から中学2年次にかけて有意に発達した。(4)運動能力について男女間の比較では、全身反応時間、立ち幅跳び、反復横跳びでは、小学5年次、中学2年次ともに男子が女子より優れており、握力、上体おこし、脚伸展力では小学5年次には有意な差はみられないものの、中学2年次になると男子が女子よりも有意な高値を示す結果となった。一方、長座体前屈では、いずれの学年においても有意な差はみられなかった。この結果から、生活習慣等のバックグラウンドと体力要素の関連性に関する詳細な分析を進め、それぞれの発達段階に応じたトレーニングの検討が必要であることが示唆された。なお、本年度は体力トレーニング時の疲労についての参考データを取得するために、トレーニング前の疲労の差異がトレーニング後の免疫能に及ぼす影響について検討を行った。その結果、疲労状態でのトレーニングは、好中球機能の低下を導き、易感染性を引き起こす可能性が推測された。
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