野球のピッチング、テニスのサービスやサッカーのキックなどで、ボールリリースやボールインパクト直前に体幹近位の身体の運動にブレーキをかけると、ボールや打具の速度が増すという考え方がある。サッカーの全力でのキックではブレーキがかけられていないことが明らかになったが、関連する運動でのブレーキの効果は明らかにされていない。筆者は先行研究を追試し、肩から先の腕だけを用いた2次元の筋・骨格モデルを用いた投運動のコンピュータシミュレーションにより、肩及び肘関節でのブレーキ効果は全くと言ってよいほどないという、先行研究と反対の結果を明らかにした。しかし、野球の実際の投球は3次元空間内で行われる。そのため本研究では、投球の3次元の筋・骨格モデルを用いてシミュレーションを行い、ブレーキの効果を明らかにすることを研究目的とした。この方法を他の関連する運動に応用することにより、それらの運動におけるブレーキの効果も明らかになると期待される。 本年3月に起きた東日本大震災のため大学の課外活動が自粛され、3月下旬に大学生を被験者として行うことを予定していた実験が不可能になった。そのため急遽、身近にいる野球経験者1名を被験者として、投球実験を行った。そして、あらかじめ作っておいたコンピュータプログラムを用いて、その実験結果から、体幹と投球腕の運動学及び運動力学変数を求めた。 このプログラム製作と同時進行で、AUTOLEVを用いてコンピュータシミュレーションのためのプログラムを部分的に製作した。現在、実験により得られたこれらの変数を用いてこのプログラムを改良中である。研究が順調に進めば、本年度の日本体育学会大会に発表申し込みを行う。
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