研究課題
スキーが他の固体摩擦に比べ特別に良く滑る現象は、欧米では摩擦融解説を基礎にした潤滑摩擦として説明されているが、日本ではそうとも言えない事実が幾つか指摘されている。我々はこれまでに、摩擦融解による水の発生しにくい短い滑走体の低速度の摩擦係数は温度が低い方が小さく、-10℃程度で最小値を示すことを見出した。さらに、其の値が良く滑る実際のスキーの摩擦係数と同程度となることを見出した。すなわち、摩擦面に融け水が発生しなくてもスキーの低摩擦は説明できる可能性があることを示した。今回は静摩擦の詳細な実験を行い、-10℃より高い温度では静摩擦力および低速度に於ける動摩擦力は雪とポリエチレンの接触面における凝着力のせん断応力であることを明らかにした。この領域では、温度上昇に伴い摩擦力は増加する。ただし、融点の近傍では、凝着力が強くなる一方でそのせん断応力が急激に弱くなるため、動摩擦係数が小さくなると考えられる。一方、-10℃より低い温度において、1 m/sec 以下の低速度で温度低下に伴い摩擦係数は増加し、速度上昇でも摩擦力が微増することをみいだした。この事実は、従来からの凝着説でも摩擦融解説でも説明できず、静摩擦とは異なる原理による摩擦力が働いている事を示唆する。今回の研究では、低速度で融点に近いところと言う限界は有るが、摩擦のメカニズムを明らかにすることができた。今後はさらに低温で働く摩擦現象のメカニズムを研究する必要がある。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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