3ヵ年にわたって実施される本研究は、高齢者の注意機能と二重課題時の立位バランス能力及び歩行能力との関係について明らかにするとともに、定期的な運動・スポーツが高齢者の注意機能や二重課題時の立位バランス能力と歩行能力・動作に及ぼす影響について検証することを目的とする。最終年にあたる本年度は、高齢者運動群30名と高齢者対照群25名を対象に、運動実施前後の注意・認知機能の評価を行うとともに、二重課題時の立位バランス能力と歩行能力・動作を測定・分析し、両群の測定・分析値を比較した。すなわち、注意・認知機能して、Trail Making Test-A・B (TMT-A、TMT-B)、Mini-Mental State Examination(MMSE)の調査を行った。また計算時(引き算時:二重課題)のFunctional Reach Test(FRT)、開眼・閉眼片足立ち、Timed Up and Go Test(TUG)を測定した。さらに、計算時の歩行動作を三台のカメラで計測し、歩行速度、歩幅、身体関節中心変動などについて3次元動作分析システムを用いて分析を行った。運動実施前後の測定及び分析値をもとに、運動群と対照群の注意機能、二重課題時の立位バランス能力と歩行能力を比較検討することによって、定期的な運動・スポーツの実施が高齢者の注意機能や二重課題時の立位バランス・歩行能力に及ぼす影響について詳細に分析・検討を行った。その結果、運動群が対照群に比べ、TMT-A及びTMT-B及び計算時のTUGの時間の短縮、歩行速度、歩幅の減少、ならびに計算時の歩行時の足関節・膝関節中心動揺が小さくなることが明らかとなった。これらのことは、定期的な運動・スポーツの実施によって高齢者の注意機能や二重課題時の立位バランス・歩行能力が向上する可能性を示唆している。
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