本研究の目的は、実践コミュニティ(以下、コミュニティ・オブ・プラクティス)に焦点を当て、地域内に散在するこの集団がスポーツ組織の知識の創発と資源化にどのように機能するのか、またそのコミュニティ間の有機的関係や進化がスポーツ組織の自律性にどのように影響するのかを明らかにすることにある。本研究では、この目的を達成するために、以下のような3つの研究課題を設定している。 (1) 事業化をめぐる知識の創発・資源化とソーシャル・キャピタルとの関連性について明らかにする。 (2) 事業化をめぐるコミュニティ・オブ・プラクティスの出現・機能化・進化の変容プロセスを明らかにする。 (3) コミュニティ・オブ・プラクティスが組織の自律性にもたらす影響を明らかにする。 本年度は、まず、本研究の鍵概念となるコミュニティ・オブ・プラクティスをはじめ、資源化プロセス、組織進化論、そして組織の自律性に関する研究動向を再検討した。特に、上記に関する視点は、国内外を含め、スポーツ経営学研究ではほとんど着手されておらず、社会学や経営学で進められている文献から本研究を進めるために必要な概念の抽出や操作化を進める上での構成要素などを抽出した。ただ、社会学や経営学においても十分な実証研究が進められていないことを考慮し、外部妥当性の克服を恐れず、組織現象の解明のために経験的事実を数多く積み重ねる必要があると思われる。そもそも組織研究を進める上で、実証するために十分なデータを確保すること自体が比較的困難であるということが、研究成果の提示をためらわせていることを考えると、まずは、単一組織や少数のケーススタディによる経験的事実の提示を次年度では報告したい。
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