初年度はトレーニング負荷構成に関する文献資料の収集と分析、並びに、代表的研究者のインタビューを行った。成果としては、第一に、旧ドイツ民主共和国ライプチヒ体育大学のスポーツ指導者養成課程の、スポーツ方法学講座に所属していた教授陣の教授資格論文約50編を収集することができた。これは指導者育成にかかわるスポーツ方法学の学術的な基盤を形成するという意味合いを持ち、主に1970年代の中盤から研究者の育成が図られ、一般トレーニング方法学、球技学、対人競技学、スポーツ心理学、スポーツ生理学などの基幹となる学術領域を形成するに至った。本研究で収集した資料はほとんどが当時極秘扱いされていたもので、1990年以降のライプチヒ大学スポーツ科学部、及び、ドイツ応用トレーニング科学センターの図書館によって整理され公開されている貴重な資料である。成果の第二は、適性診断の科学サポート研究にかかわった研究者、並びに、対人競技学の教授資格論文を著した研究者への聞き取り調査から、トレーニング科学、とりわけ、選手育成にかかわる研究、一般トレーニング科学と個別種目を特定した個別トレーニング科学の関連性や、その専門性についての研究上の示唆を得ることができた。適性診断(我が国ではタレント発掘という用語が一般的である)の科学サポート研究については、カヌー競技では、Janke博士、陸上競技ではSchroeder博士、レスリングではWallberg博士から、具体的な選抜基準値などの資料を提供いただいた。Barth教授とKirchgaessner教授からは、ボクシングとフェンシングという代表的な対人競技学についての研究資料を提供いただくことができた。フェンシングについては、さらにジュニア競技者のための教科書、現在のトレーニング指導要綱も入手することができた。
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