本研究の目的は、ジョギングブーム以前には、「持久走」と呼ばれていた鍛錬的色彩の濃い走運動の一形態が、美容や健康づくりを目的とした走運動化(ジョギング化、健康走化)する過程で、メディア言説が一体どのような影響を及ぼしたのかを明らかにすることである。具体的には、わが国への「ジョギングの紹介期」、「ジョギングのブーム期、そして「ジョギングの定着期」の3段階において、メディアがジョギングという新たな文化をどのように言説化し関わってきたのかを検討する。 この目的のために、九州大学図書館に所蔵されている「毎日新聞」、「読売新聞」、「朝日新聞」縮刷版を利用して、長距離を走ることにどのような意味があるのか、多くの人が走るようになった社会背景などについて記述している記事(たとえば、長距離走は精神力を高めるので、勉強の役に立つ、長距離走は肥満防止に役立つ、長距離走は精神力の強化に役立つ・・・など)の収集作業を行った。収集の対象とした期間は、1965年1月1日から1994年12月31日までであった。 昭和40年代終盤から昭和50年代初頭をジョギングのメディアによる紹介期、昭和50年代をジョギングのブーム期、そして昭和50年代終盤から平成の初頭をジョギングの定着期と仮定して、ジョギング関連の記事が量的にどのように推移していったのかを検証し、さらに、収集された朝日新聞、毎日新聞、読売新聞のジョギング関連記事の内容を検討下結果、この分類の正当性が確認できた。
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