本年度の研究目的は、収集されたデータに基づき、「ジョギングの紹介期」、「ジョギングのブーム期」、そして「ジョギングの定着期」におけるメディア言説を詳細に分析することである。分析の結果、以下のようなことが明らかとなった。 「ジョギングの紹介期(昭和40年代終盤~昭和50年代初頭)」 昭和40年代にはいると、車やオートバイ、自転車の急増に伴う交通難が、深刻な社会問題となりはじめる。この時期の記事の特徴は、交通事情の悪化のなかで、あえて走ることの意味を社会の近代化に対する批判や反省という観点から説明したり、走ることが子どもの体力や知力の発達にとって有益であると主張したりするという、教訓を垂れるような記述である。 「ジョギングのブーム期(昭和50年代)」 この時期は、「走る」という行為が、「健康」というキーワードとともに市民社会に広く、そして深く浸透していった。しかしながら、走るという行為は、しばしば健康やジョギングに対立するような位置づけを与えられ報じられてもいる。健康やジョギングブームに代表される近代的なライフスタイルに対立するものとして走るという行為を位置づけ、その時代的な意味や意義を論じようとしていたように思える。 「ジョギングの定着期(昭稲50年代終盤~平成)」 この時期になると、走るという行為は、それ自体が多様な楽しみを秘めた独特のスポーツであるととらえられるようになり、市民のライフスタイルのひとつとして理解されるようになる。つまり、教訓めいた、あるいは説教を垂れるような記述を何ら認めることができなくなる。「なぜ走るのか」など問うたり、説明したりする必要はなくなったのである。
|