研究概要 |
本研究の目的は、スポーツという分野では比較的新しい研究分野であるコーチの「心理的契約」(Psychological Contract)」に着目し、その心理的契約に及ぼす要因および、コーチの所属している組織に対するコーチの信頼感や満足度に作用する要因を検証することである。1年目は、国際プロジェクトとして開発された指標を用い、その妥当性を検証することを目的とし、日本の水泳とJリーグのコーチのデータ収集を行った。2年目は、1年目の水泳コーチの分析結果の発表、収集したJリーグのコーチのデータ分析を行った。水泳のコーチの研究成果は、2011年度ヨーロッパスポーツマネジメント学会(スペイン)での発表論文として採用され、発表を行うことができた。水泳コーチの心理的契約実行(PCF)の5局面(取引、関係性、トレーニング、一般的契約、資源の援助)の妥当性は確認的因子分析(CFA)を用いて検証された。その結果、提案されたモデルの妥当性が本研究の日本人の水性コーチのサンプルにおいても確認できた(chi-square/df=2.67,p<.01;CFI=.98;NNFI=.97;RMSEA]=.09)。また各因子の信頼性分析においても信頼性を確認することができた(α=.82~.92)。さらに、心理的契約執行(PCF)の5局面の「職務満足」、「感情的コミットメント」、「転職意図」への影響を見るために、重回帰分析を行った。職務満足との関係においては、「取引」契約が有意な関係を示した(bjob satisfaction=31,p<.01),一方、他の局面には有意な関係は見られなかった。また、「感情的なコミットメント」と「転職意図」は「一般的契約」局面に有意に影響があることが明らかとなった(baffective commitment=.24,p<.05;btumover intention=-.25,p<.05)。心理的契約実行の能力を示すR2値は職務満足.18)、感情的コミットメント(.15)、転職意図(.23)であった。Jリーグのコーチの調査データを回収し、結果も分析を行い、2012年度のヨーロッパスポーツマネジメント学会での発表のための抄録を投稿した。しかしながら、震災の影響で、計画していたバレーボールのコーチの調査は困難であったため、次年度に実施することとした。
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