我が国では、平成16年(2004年)よりスポーツにおける国際競技力向上施策として「タレント発掘・育成事業」(以下、TID事業)を展開しており、日本スポーツ振興センター(JSC)と日本オリンピック委員会(JOC)の連携による地域でのTID事業は、福岡県・岩手県・山形県・埼玉県・長野県・和歌山県・北海道(3地域)・東京都・秋田県・山口県・京都府・宮城県の14地域となった(2015年3月現在)。TID事業には「適正種目選択型」、「種目転向型」、「種目特化型」があり、発掘時の対象年齢なども含め、それぞれの地域の特性に応じたTID事業を展開している。 本研究では、TID事業の発掘の段階に焦点を当て、タレントとして選抜されなかった「非選抜者」に着目した。今年度は、適正種目選択型の和歌山県と種目特化型の京都府のTID事業オーディション参加者の保護者と子どもに対して質問紙調査を実施し、特に、非選抜者へのサポートプログラム等については保護者の定性的データを分析した。その結果、1. スポーツ環境の整備によるサポート、2. 結果のフィードバックによるサポート、3. プロジェクトの改革によるサポートの3つのコアカテゴリーが重要であることが明らかになった。この3点は、福岡県・山形県などのTID事業に関するヒアリング調査においても指摘されており、非選抜者への特別プログラムの実施や地域スポーツクラブとの連携事業など、新たなシステム構築を検討する基礎資料となった。単にTID事業を競技スポーツの発展のためだけに遂行するのではなく、実施事業を起点に生涯スポーツ及び地域スポーツ振興の発展へと繋げていくことを念頭に、地域の各大学や競技団体、そして地域スポーツクラブなどを巻き込んだ、非選抜者に対するサポートシステムについて「地域協働(local partnerships)」の視点から再検討することができた。
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