フリーランスを中心的な戦術として採用し国際大会において高い指導実績を持つ中川文一が指揮した,アトランタオリンピックで7位入賞の全日本女子チームでプレイし,自身も高い指導実績をもつ萩原美樹子選手へのアンケート調査およびインタビュー調査の質的分析 分析の結果,以下の3点が明らかになった. ①事前計画性が低く,特に決まった形を持たない,そのときのゲーム状況によって選手がプレイを選んでいくフリーランスは,1996年のアトランタオリンピックおよび2010年のアンダー17女子世界選手権において高い競技成績を残したこと,また,ヨーロッパ型やアメリカ型の攻撃とも異なり,日本チームの独自性が高く,体格に劣る日本チームが世界大会において高い競技成績を残すためには重要な攻撃戦術になると考えられることが明らかになった. ②1996年アトランタオリンピック時の女子日本代表チームのフリーランスは,最初に言葉や原則をいくつか準備して始めたというよりも,集まったプレイヤーの個性がまず最初にあり,それを活かすプレイを工夫しながら作っていったこと.また,アトランタオリンピックまで,ほぼ同一のメンバーで1年間の半分をナショナルチームの活動にあて,かつ6~7年の年月を要したことが明らかになった. ③1996年アトランタオリンピック時の女子日本代表チームのフリーランスの開始の仕方は,速攻の場合と,ハーフコートでの攻撃の場合とで異なること.また,フリーランスの開始は,ポイントガードのパスやドリブル等のプレイで始まる場合と,ポイントガード以外のプレイヤーがシュートチャンスを生み出すスコアリングプレーを先に仕掛ける場合とがあること.さらに,事前計画性が低くてもシュートチャンスを生み出すためには,攻撃開始部分と,攻撃が停滞したいわゆる「困った状態」でどのようなプレイを志向するかについてのルールが大切であることが明らかになった.
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