研究概要 |
野球の投球動作はステップによる身体の投球方向への並進運動,腰・上体・肩へと連動する体幹の回転運動,そしてこれらの過程から生じたパワーをボールに伝える腕の振りへと連続的に行なわれる。これらの動作は一連の流れであり,球速に影響を与える動作を明確化することは難しい。本研究は動作制限法により4種類の投球動作を設定し,それぞれの球速を観察することにより,球速に影響を与える動作について検討を加えることを目的とした。また,シャフト(9kg,10kg)を肩に担いだ状態での体幹の回転パワーを計測し、体幹の回転パワーと球速との関係ついても合わせて検討を行なった。被験者は高等専門学校野球部員(n=40)であった。ボールは硬式野球ボールを用いた。投球動作は通常のオーバーハンドスロー(NT),脚の踏み出しを行なわない投球(NST),椅座位姿勢からの投球(CT),上体を固定して上肢のみの投球(NRT)の4種類であり,スピードガン(Stalker ProII,ACI社製)により球速を測定した。NTに対してNSTおよびCTにおいて有意な相関関係がみられたが,NRTにおいて相関関係はみられなかった。これは上体の回転運動がなくなると,球速に差がみられないことを示しており,球速は体幹の回転パワーとそれを伝達する上肢の振りに大きく影響されている可能性が推察された。さらにシャフトを用いた体幹の回転パワーと球速の関係においては,いずれの条件も有意な相関がみられなかった。これらの結果から,球速の決定要因は体幹のパワー発揮要素よりもパワーを連動する動作効率によるところが大きいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は投球速度を決定する体力要素を明らかにすること,その体力要素を向上させるトレーニングメニューを開発することにより投球速度の向上を図ることを目的としている。当初の仮説とは異なり,投球速度を決定する体力要素は限定されなかったが,投球速度を決定する投球動作が明らかになりつつある。当初の体力要素から,動作(動き)に着目点を変え,研究を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
投球速度を決定する体力要素だけではなく,投球動作に着目し,研究を進めている。投球速度を向上させる理想的な動きを追求すること,またその動きを実現させることが難しいと予想される。試行錯誤になる可能性が高いが,一つずつ実験を行ない,検証していきたい。
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