本研究では、標高1000m、2000m、3000m相当で脂肪燃焼が最もよいとされる中強度(50%VO2max)での運動を行い、体脂肪燃焼にどのような違いがあるのかを明らかにすることを目的とした。 対象は健常な成人男性8名(年齢21.9±1.8歳)を対象とした。常圧低酸素環境下(18.6%:標高1000m、16.4%:標高2000m、14.5%:標高3000m相当)においてVO2maxの50%に相当する負荷で40分間(60rpm)の自転車駆動をそれぞれ行った。呼気ガス分析は、運動開始から運動後60分後までとした。各低酸素環境下における酸素摂取量から求めた運動強度は、3条件下でほぼ50%VO2maxを示し、同水準であった。 運動中の酸素飽和度(SpO2)の平均値は標高1000m(94.1%)>2000m(90.1%)>3000m(82.6%)相当の順となり、それぞれ有意(p<0.05~0.001)な差が認められた。運動中の糖消費量の平均値および脂肪消費量の平均値にいずれも3つの低酸素環境下の間で有意な差は認められなかった。運動後の糖消費量の総量の平均値は標高3000m相当の値が標高1000m相当の値より有意(p<0.05)に低い値を示し、運動後の脂肪消費量の平均値は標高3000m相当の値が標高1000m相当の値より有意(p<0.001)に高い値を示した。 各環境下全体における運動中のSpO2と運動後の糖消費量は有意(p<0.05)な正の、運動中のSpO2と運動後の脂肪消費量は有意(p<0.05)な負の相関関係が認められた。 以上の結果から、脂肪燃焼が最もよいとされる標高は3000mであることが明らかとなり、酸素濃度や標高といった物理的な環境条件よりも生体における動脈血酸素飽和度という生理的な低酸素刺激に対する応答のレベルが体脂肪燃焼に重要であることが示唆された。
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