研究概要 |
目的:運動は脳機能、脊髄運動神経機能を最善にする最強の手段であるという大きな考えが現在の世界の運動科学、神経科学の底流にある。しかしながら、現在どのような運動が脳機能、運動神経系を強化するために必要かその答えは未だ見出されてない。そこで、本研究では長期の運動トレーニングが脳機能、脊髄運動神経にいかなる影響を及ぼすかを正碗に捉え.その基礎データに基づいて脳機能や脊髄運動神経機能を鍛えるための運動処方開発を提案することを目的とした。特に本年度においては、高強度の有酸素およびレジスタンストレーニングをそれぞれ継続的に行わせ、その介入期間中の脳機能や脊髄運動神経機能の変化を詳細に鋼べ、高強度運動が真に脳機能、脊髄運動神経に悪影響を及ぼしているかを明らかにする。 本年度は3ヶ月間にわたる高強度の運動介入期間前後の脳機能(運動関連脳電位、P300電位)、脊髄運動神経機能(H反射、運動神経伝導速度・分布)、を比較する。 方法:運動習慣がなく、糟神疾患や神経疾患等の既往歴のない健康な大学生・大学院生60名。なお、参加者は3ヶ月間の介入期間中の運動様式により以下の3群に分けられる。 (1)コントロール群(20名):30分間の下肢を中心としたストレッチ運動。 (2)有酸素運動群(20名):15分間の80%VO2maxの自転車ペダリング運動 (3)レジスタンス運動群(20名):15分間の下肢を中心としたレジスタンス運動(負荷:80%1RM)。 結果と考察:コントロール比べて15分間の80%VO2maxの自転車ペダリング運動後ではP300潜時の短縮とP300電位の振幅の増大が認められた.また15分間の下肢を中心としたレジスタンス運動(負荷:80%1RM)の場合においてもP300の潜時が短縮し振幅は増大する傾向にあった.運動強度と事象関連電位は逆U字型を示す傾向にあると報告されているが,本結果では高強度の運動でもP300の潜時が短縮し振幅は増大を示し,認知機能の促進を示す場合もあることがわかった.最近の研究報告においてもインターバルトレーニングによっても学習能力が向上した,すなわち脳機能の向上があったことから高強度運動であるということで認知機能の低下が起こるとかぎらず,本実験によるとかえって認知機能の向上が見られた.さらに脊髄運動神経機能(H反射、運動神経伝導速度・分布)においても有酸素運動群は機能的に向上を示した,またレジスタンス運動群のおいても必ずしも脊髄機能の低下を示す結果は得られなかった.
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