研究概要 |
平成22年度に実施した研究の成果 【背景】後肢懸垂ストレスで下肢の筋が萎縮する際にエピジェネティックな変化(DNAのメチル化変化)がみられることが予備的研究で明らかになり、これをふまえ、1.筋萎縮におけるDNAのメチル化変化の詳細な把握、2.運動負荷時のDNAのメチル化変化について調べること、が本研究の目的である。この目的のため、本年度は、後肢懸垂ストレスに起因する筋萎縮におけるエピジェネティックな変化の詳細な解析を行った。 【成果の具体的内容】今年度は、予備的研究で明らかにされた筋萎縮(ラットの後肢懸垂モデル)時の3種の筋分化関連遺伝子(下記)のDNAのメチル化低下について、Pyrosequencing法を用いて、定量的に実証した。その結果、 1.MyoDの転写因子(AP1,NF1,EBox)結合領域ならびにその近傍の5カ所のCpG配列のDNAのメチル化率が、対照ラットの筋組織に比べ低下していることが判明した。 2.Myogeninでは、転写因子(EBox)結合領域を含むその近傍の4カ所のCpG配列のメチル化率が、対照ラットの筋組織に比べ低下していることが判明した。 3.Myostatinでは、転写因子(Nkx2.5)結合領域を含むその近傍の5カ所のCpG配列のメチル化率が、対照ラットの筋組織に比べ低下していることが判明した。 【成果の意義】転写因子結合領域のDNAのメチル化低下は、遺伝子の転写活性の誘導効果を意味する。したがって、上記の結果は、非運動状態によって筋分化遺伝子が活性化状態に移行したと解釈された。 【成果の重要性】この成果の重要性は、廃用性負荷という環境変化で生体にエピジェネティックな変化が刻印されることを実証したことである。この結果より、逆に運動を過剰に負荷した際の筋と脳におけるDNAのメチル化変化の解明が重要と考えられた。
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