研究課題/領域番号 |
22500613
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
芳賀 脩光 筑波大学, 名誉教授 (80093102)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 高齢者 / 萎縮性骨格筋 / 筋代謝能 / 酸化ストレス / 運動トレーニング |
研究概要 |
本研究は平成24年度において、以下のように研究(1)、(2)について実施した。 研究(1):高齢者の酸化ストレスに及ぼす長期健康づくり運動の影響:本研究は対象とする高齢者と十分なインフォームドコンセントをとり、1年3ヶ月におよぶ健康づくり運動(複合総合運動)を実施し、形態、体力、血液の各種パラメーターをはじめ、酸化ストレスに及ぼす影響を検討した。400m歩行は有意(P<0.01)な時間の短縮を示した。また、HDL-Cは有意な増大(P<0.05)を示した。酸化ストレスの指標であるヒドロペルオキシド(d-ROMs)は極めて著明な低下(P<0.001)を示した。すなわち、高齢者の健康づくり運動は抗動脈硬化作用因子の増大と、酸化ストレスの軽減に顕著な効果を示すことが実証できた。特に、長期的な観察でその成果を立証した。 研究(2):高齢者の萎縮性骨格筋に対する筋レジスタンス運動の影響:本研究では、インフォームドコンセントを得た上で、72~84歳の高齢男子・18歳の青年男子を被検者として、筋レジスタンス運動(スロースクワット)時の筋内酸素動態を大腿広筋を被検筋として近赤外線分光法(Near Infrared Spectroscopy:NIRS)により測定し、高齢期の筋レジスタンス運動の効果について検討することを目的とした。その結果、高齢男子でレジスタンス運動時の酸素化レベル(oxy-Hb/Mb)が青年男子に比較して低い傾向を示した。減少の度合いも青年男子と比較して大きかった。また、運動後の筋の回復時間(recovery time:RT)が青年男子と比較して遅延した。これらの要因として、加齢による筋細胞中のミトコンドリア数の減少・ミトコンドリアの呼吸機能の低下、クレアチンリン酸の再合成速度の減少などが考えられる。なお現在、トレーニングの効果については引き続き検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は研究代表者が日本橋学館大学の横山幸三氏から当該大学が平成22年度の文部省による認証評価を受審するに際し、科研費基盤研究の取得を依頼されたものである。研究代表者は定年まで2年間であるため、研究上、更に2年間が必要であると説明し、学長はこれを承認して申請したものである。しかし、当該大学の事務局長藤山一郎氏は「科研費の取得は個人的なもので、大学は関与しない」と強く主張し、平成23年3月23日突然に定年規定であるとして退職を勧告、学長もまた申請時の承認を一方的に破棄し、退職となった。本研究は「萎縮性骨格筋に対する運動の影響」であるため、地域社会貢献事業「老化・疾病予防のための高齢者健康運動教室」(受講生110名)を立ち上げ、同時に研究の遂行を準備してきたが、この事業の全てを中止することとなり、実際、研究活動は実施不可能な状態となった。その後、23年度は0からの再スタートとなり、個人的にごく小規模に、高齢者の運動愛好者を改めて募り、平成24年までの研究を継続してきた。このため、研究の進捗度や達成度は次第に遅延することとなってきており、現在に至っている。24年度の研究内容は23年度の予定を含め以下のように実施してきた。 研究(1):平成23年と24年にかけて実施してきた研究として「高齢者の酸化ストレスに及ぼす長期健康づくり運動の影響」について遂行した。 研究(2):「高齢者の萎縮性骨格筋に対する筋レジスタンス運動の影響」本課題は平成24年の新規のテーマであり、筋レジスタンス運動として、自己の体重を利用した膝屈伸運動を1日90回を負荷し、トレーニングの成果を検討している。平成25年度においても引きつづき、研究の成果を検討し、総括していきたい。 現在までの達成度は60~65%レベルにある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度においては 1,平成24年度実施してきた「萎縮性骨格筋に対する筋レジスタンス運動の影響」についてのトレーニング後のデーターの分析、および論議、また全体への総括をおこない、学会発表等の準備を進める予定である。 2,平成25年度の研究実施策としては、24年度の研究課題に対して、その運動特性を考慮し、「萎縮性骨格筋に対する有酸素運動の影響」について検討する。これは高齢者に対して、リズム運動や歩行運動の筋持久力や長時間運動を中心とする有酸素運動を一定期間負荷し、骨格筋の筋代謝能や酸化ストレス、その他の心筋血管系のパラメーターについて測定し、運動の効果について、検討するものである。25年度の研究計画は6~10月の期間に実施し、総括し、研究の成果を発表したい。 3,その他、本研究の成果のすべてを総括し、研究発表をする予定である。
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