「酸化ストレスに及ぼす長期間の高齢者健康運動トレーニングの影響」酸化ストレス(血中ヒドロペルオキシド:d-ROMs)低減には、身体運動の継続によって抗酸化システムの亢進が有効であるかどうかについて着目し、 高齢者を対象に15か月間の継続的な健康運動のトレーニング実験を行った。被験者は運動する習慣をもたない者8名(67.6±4.7歳)であった。400m歩行時間は、有意(p<0.001)な減少、踏み台昇降は有意な増大(p<0.05)を認めた。脂質代謝にかかわる生化学的パラメーターとしての酸化LDL濃度は、トレーニング開始前の77.5%に低下した。HDL-コレステロール濃度は、有意(p<0.001)な上昇、中性脂肪濃度は減少した。ヒドロペルオキシド濃度(d-ROMs)は、15か月で27%の減少を示した。鉄還元能(BAP)は、15か月後低下を示した。以上より、高齢者の身体トレーニングは、歩行に関わる脚力は3か月程度の軽運動でも改善が認められる。また、代謝改善ならびに酸化ストレスへの影響については、15ヶ月の比較的長期間の継続は抗動脈硬化作用因子と酸化ストレスの軽減に顕著な効果を立証した。 「高齢者の筋レジスタンス運動、および有酸素運動が筋代謝能におよぼす影響」健常な高齢者を対象として、4カ月の筋運動(スクワット)、および有酸素運動(歩行運動)をおこなわせ、筋代謝能(酸素化Hb・脱酸素化Hb)におよぼすトレーニングの影響を検討した。その結果、トレーニング後、運動負荷テスト直後の酸素化Hbと脱酸素化Hbの交点までの時間は、歩行運動の場合よりも筋運動において早期に出現し、筋肉において酸素の供給、酸素の吸入に改善されることを示した。しかし、安静時血圧、運動時血圧は歩行運動において明らかに低下した。血管の硬さについては、どちらの運動様式の場合でも改善する者、変化なしの者と個人差がみられた。
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