研究概要 |
我々は500名以上のスポーツ選手を対象としてCILPおよびアスポリンの遺伝子多型が椎間板変性の発生に対する有意なリスクファクターであることを明らかにしてきた.特にこれらの遺伝子多型と椎間板変性の関係には性差が存在するということが特徴である.CILPおよびアスポリンはTGFbeta結合性の細胞外マトリクスであり,TGFbetaのシグナル伝達に関わるタンパク質は同様の傾向を示す可能性は高い.そこで我々は,TGFbeta signaling Pathwayに関わるタンパク質のSNPを中心に椎間板変性との関係を解析する,具体的には潜在型TGFβ結合タンパク質,デコリン,TGFbeta,TGFbeta受容体,SMADなどの中から,椎間板において発現の高いタンパク質およびすでに疾患などとの関連性の検討がなされているいくつかのSNPなどに焦点をあて解析を行う.解析を行う上では特に性差に着目する. 本年度は大学スポーツ選手541名(男子358名,女子183名)を対象として,TGFbetaシグナル伝達経路において報告されている106箇所のSNP(Watanabe et al.J Hum Genet.2002)の中でTGFbeta1-5G/T(rs2241715)と椎間板変性発生との関連性の解析を行った,椎間板変性の有無はMRI画像によりPfillman分類によって判定した,ロジスティック回帰によりオッズ比を算出した.その結果,全対象者においてTGFbetal-5G/Tに関してGアレル保有者が椎間板変性発生のリスクが高い傾向が得られた(オッズ比1.27,1.0-1.6,P=0.056).ただし性差は確認されなかった.これらの結果はTGFbetaシグナル伝達経路が性差によらず椎間板変性に対して何らかの有意な相関関係を有することを示唆している.この結果を受けて今年度はさらにTGFbetaシグナル伝達の下流に位置するsmadタンパク質のSNP解析を行う予定である.
|