研究概要 |
モノカルボン酸輸送担体(MCT)は乳酸の放出と酸化を中心とする乳酸代謝活性化に重要な役割を担っている。乳酸は、MCT4によって速筋線維から放出され、MCT1によって心筋や遅筋線維で取り込まれて酸化されるのが主たる代謝である。これまでにMCTの発現は加齢や持久的トレーニングによって高められることや乳酸閾値レベルを遥かに超える高強度運動トレーニングによってMCTの発現が増加されることが明らかにされている。しかしながら、運動によるMCT発現増加の分子機序は明らかにされていない。骨格筋のAMPキナーゼ(AMPK)活性化は糖代謝に関わる有力な分子である。乳酸はグリコーゲンを中心とする糖からの基質であるため、運動による糖代謝活性効果と類似した分子機序でMCTの発現を高めると考えた。本年度の目的はトレッドミル運動負荷装置を用いて、単発の高強度短時間運動モデルの構築を試みた。実験は、正常雄性SDラットを用いて、トレッドミルの速度を一定の50m/minに設定して、20秒間の走行運動と40秒間の休息を25セット行った。構築したプロトコールにおいて、グリコーゲンとAMPKのリン酸化を検討した結果、ヒラメ筋(61%)、足底筋(80%)、腓腹筋(red 82%, white 73%)のグリコーゲンの有意な減少が認められ、AMPKのリン酸化もすべての筋群において有意に上昇したことを明らかにした。今後は、構築した単発の高強度短時間トレッドミル運動モデルを用いたMCTの発現効果だけでなく、乳酸閾値未満での低強度長時間運動におけるMCT発現効果に着目して、MCT発現効果に対するAMPキナーゼの活性化効果を検証していく。
|