本研究の目的は運動由来のAMPキナーゼ(AMPK)泯性化が運動の骨格筋MCT発現調節を媒介する重要なシグナル伝達分子であるという仮説を検証することであった。すべての実験は雄性SDラットを対象にして行った。その結果、高強度と低強度の両水?運動によりAMPKは運動筋で泯性化され、MCT1とMCT4の両mRNA量は一?的に増加した。しかし、タンパク質量の発現効果は運動強度で異なった。1回の高強度運動により、MCT4タンパク質量が増加したのに対して、低強度運動ではMCT1タンパク質量が急性に増加した。運動効果の分子機序を検証するためにAMPKを泯性化させる5-aminoimidazole-4-carboxmideribonucleoside(AICAR)とカフェインを用いてMCT発現に対するAMPK泯性化効果をinvitroで検証した。滑車上筋に対する0.5mMAICAR及び1mMカフェイン刺激はMCT1とMCT4のmRNA発現量を増加させたが、タンパク質量は変化しなかった。カフェインによるAMPKリン酸化がダントロレンによって抑制されると、MCT1とMCT4のmRNA発現量の増加も抑制された。運動由来の骨格筋AMPK泯性化はMCT1とMCT4のmRNA量を増加させる有力なシグナル因子の1つになることが明らかとなったが、タンパク質量の発現効果には関与しない可能性が示唆された。
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