研究課題/領域番号 |
22500617
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
宮本 忠吉 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (40294136)
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研究分担者 |
中原 英博 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 助教 (90514000)
小河 繁彦 東洋大学, 理工学部, 教授 (80553841)
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キーワード | 生理学 / システム制御工学 / 運動 / 呼吸調節 / 循環調節 / 中心循環 / フィードバックシステム / 脳循環 |
研究概要 |
水浸時や姿勢変化時、無重力環境下では静水圧要因によって中心循環血行動態が変化し、循環系への影響だけでなく安静時の換気量減少や運動時の換気効率改善など呼吸系への影響も報告されている。しかし、両調節系の相互連関の機構については従来法の限界ゆえ明確な知見を得るに至っていない。 昨年度の研究において、我々はシステム工学を理論的背景とする新しい解析手法を用いて、中心循環血行動態の変化が呼吸調節系のフィードバック制御機能、すなわち中枢コントローラ(制御部)と末梢プラント(制御対象部)機能特性に及ぼす影響を定量化した。その結果、中心循環血液量が増加する水浸条件では、動脈血二酸化炭素分圧が上昇し換気は抑制された。逆に、中心循環血液量が減少する下半身陰圧負荷条件(LBNP条件)では、動脈血二酸化炭素分圧が減少し換気が亢進した。この中枢コントローラ機能特性のリセッティングメカニズムとして、同時測定した脳血流量の変化より、脳内のCO2washout作用が関与している可能性が示唆された(欧文論文投稿中,2012)。 今年度はさらに、両条件下にて運動負荷(上肢エルゴメータ)を実施し、呼吸調節系の動的フィードバック制御機能に及ぼす、運動と中心循環動態の相互作用に関する検討を進めた。その結果、中心循環血液量を増減させた条件下での運動負荷時のCO2に対する換気反応は、1次の指数関数曲線にて近似でき、LBNP条件ではコントロール条件と比較して無駄時間の延長と著明な時定数の短縮が認められた。静特性の評価と同様、動特性評価においても、両条件にてゲインの差は認められず、中心循環動態の変化は中枢の動的制御機能を大きく変化させることが判明した。また、LBNP条件下における換気亢進時の呼吸において、浅速パターン様の亢進が認められ、これは、圧受容器反射を介するメカニズムや脳内血流動態の変化を反映している可能性が示唆された。さらに、この運動時に認められる呼吸の変化は末梢プラント機能特性の低下をもたらす可能性が示され、心不全病態における運動時呼吸異常発現のメカニズムとして、作動している可能性が示された。 最終年度はこれらのシステム解析によって得たデータを基に呼吸化学調節系全体の動的制御機能の不安定性や速応性を決定する生理学的因子について探索する思考実験を行い、呼吸に現れる病態及び生理現象のシステム的理解を深める研究に着手する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年次毎に作成した研究目的に沿って、段階的に新しい実験システムを構築し、2年間でほぼ達成すべき実験課題をクリアーすることができた。また、新しい知見につながる満足し得るデータも得ることができ、現在、論文投稿をしており、研究成果の発表も順調に進んでいる。また、現在は、最終年度における研究課題にも着手しており、ほぼ計画通り順調に研究を進めるに至っている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策は、すでに交付申請書に記載している通り、最終年度は、実験によって得られたシステム解析データを基に呼吸化学調節系全体の動的制御機能の不安定性や速応性を決定する生理学的因子について探索する思考実験を行い、呼吸に現れる病態及び生理現象のシステム的理解を深める研究に着手する予定である。また、その解析結果を基に、今後、呼吸と循環の相互連関の調節メカニズムを解明すべく、新たな研究課題にも取り組んでいく予定である。
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