増加する保健指導対象者に効果的に対処するために、これまで保健指導の点で評価されたことの無い「心の回復力(レジリエンシー)」を評価、育成することで、「真に予防的な対応」のできる保健指導受診者を増加させ、効果的生活習慣改善法(減量効果と生活習慣改善の継続性)を創出することを目的とし、有所見者および保健指導介入希望者のレジリエンシーを評価した。 前回、肥満や正常血圧高値を呈する学生において、精神回復尺度は低値で、かつ悪い生活習慣を有していた。また、肥満や正常高値血圧を有さない学生においても生活習慣得点が低く、悪い生活習慣を有すれば精神回復尺度も低値となった。前回の研究では、運動習慣が乏しい群では精神回復尺度も低く、特に精神回復尺度の中で肯定的未来志向が低かった。 今回、生活習慣介入希望の有無により介入希望者では精神回復尺度がさらに低値であり、特に感情調節得点が有意に低値であったが、肯定的な未来志向や新規性追求得点には有意な差異は見られなかった。以上から、介入を希望する対象者にはレジリエンスを高める指導が効果的で、かつ感情調節に働きかける介入が必要と考えられた。感情調節尺度には不眠、うつ状態が関与しており、これらに効果的な介入方法を検討する価値があると予想された。これまでスポーツ活動経験とレジリエンスの関連性を研究した報告14}において、レジリエンスの「肯定的な未来志向」にスポーツ成長感と時間的展望体験が大きく影響しているとしているが、運動習慣がレジリエンスの形成に関与している可能性が考えられた。 以上より、生活習慣介入希望の有無によらず、肯定的未来志向を高めるために運動療法を用いた介入方法がレジリエンスの全体的な向上に期待でき、直接的な生活習慣改善につながると考えられる。
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