子どもの体力低下や生活習慣病の低年齢化など、運動習慣に関わる重大な問題が存在し、子どもの運動習慣の形成を促進する効果的な介入法の開発が求められている。これまで、子どもの運動習慣形成に関連する社会的・心理的・行動的要因を明らかにするための研究を進めてきたが、本研究課題では、小学生から高校生における運動習慣からの離脱および再開のプロセスに関わる要因を探求することを目指している。 本年度は、小学生から高校生の間に運動習慣からの離脱を経験した大学生61名を対象に、離脱に至った経緯やその要因、ならびに運動を再開するために必要であったであろう要因についての考えを、面接および記述データを通して収集した。その上で、現時点で収集されたデータを整理した。本年度中に得られたデータからは、次のような傾向が観察された。大学生の過去の運動経験によると、多くの者が過去に何らかのスポーツ活動を体験しており、また複数のスポーツ種目の経験を有する者が多く見られる。個人的に定期的な運動習慣を形成していた者も少数見られたものの、多くが地域のスポーツプログラムや学校の部活動など、プログラムされたスポーツ活動を運動の場としていた。小学生から高校生の間で運動習慣からの離脱の原因になった要因として、「運動以外の活動への興味と部活動への参加(特に音楽系)」「学業・受験勉強」「運動に伴う傷害の発生」「熱意の低下」「指導者に関わる要因」等が挙げられ、複数の要因が複合的に関連しあって離脱に至っていた。また、運動再開の重要な要因と考えられたものは、友人関係などの人的環境や時間的余裕などであった。
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