子どもの体力低下や生活習慣病の低年齢化など、運動習慣に関わる重大な問題が存在し、子どもの運動習慣の形成を促進する効果的な方法の開発が求められている。本研究では、初年度より、大学生への面接調査等を通して、過去に生じた運動からの離脱-再開の背景要因を探索的に収集してきた。平成24年度は、ひき続き背景要因の収集を行った後、得られた多様な要因をもとに質問紙調査を行った。質問紙調査では、中学生から高校生にかけての運動からの離脱要因を定量的に明らかにすること、また、それらの要因がその後の運動の再開の有無を説明するか否かを検討することを目的とした。 質問紙調査では、有効回答の得られた中学生948名、高校生972名のうち(有効回答率84.2%)、離脱の経験のある中学生392名、高校生329名を離脱-再開要因の分析対象とした。 離脱要因は、最も多かったのが「引退する年齢になった」(39%)であり、部活動や地域のスポーツクラブの引退をきっかけに運動習慣を失う傾向が見られた。また、「勉強との両立が困難」(24%)、「ゆとりがほしかった」(22%)といった、学業や生活にかかる負担が離脱の要因となっていた。続いて、「楽しくなかった」(14%)、「運動以外にやりたいことがあった」(14%)、「満足するまでやり遂げた」(12%)であり、運動への成就感や他の活動への興味が離脱の要因になり得ることが分かった。なお、上達や充実感の不足、人間関係、アルバイトの開始、ケガ等は相対的に頻度は高くなかったが、さらに深く考察する必要がある。 ロジスティック回帰分析を用いて、運動の再開の有無が離脱の要因や運動への動機づけ等によって説明されるか否かを検討した。その結果、「満足するまでやり遂げた」等のプラスの要因や運動への動機づけは再開を促進するものの、総じて離脱要因が再開を規定するものではないと考えられた。
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