平成22年8月に北アルプス穂高岳山荘宿泊者(40歳以上)に対して、調査の主旨を口頭にて説明し、同意の得られた32名を対象とした。調査項目は、普段の健康状態や運動習慣に関するアンケート調査、経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)や血圧の測定に加えて凝固線溶系の検査を含む血液検査を行った。凝固線溶系のマーカーとして、α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体(PIC)、トロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT)、Dダイマー(DD)を、心筋障害のマーカーとして心筋トロポニンTの測定を行った。採血後は速やかに血漿分離し保存した。 中高年登山者多くは、普段から体力づくりのため運動をしていたが、慢性疾患を抱えたものも少なくなかった。凝固線溶系検査で異常値をとったものは、PICで7名(22%)、TATで7名(22%)、DDで2名(6%)、心筋トロポニンTで7名(22%)であった。2割程度の登山者において凝固が活性化されている状態であることが示唆された。また、軽度であるが心筋障害が発生している可能性も考えられた。既往歴、現在治療中の疾患、血圧やSpO2の値と凝固線溶系のマーカーの値との関連について検討したが、明らかな関係はみられなかった。 今後もさらに調査登山者数を増やして検討していく。
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