本研究は,3つのテーマに取り組んだ。まず,65歳以上の地域在住高齢者を対象に健康調査を実施した。そして,以前実施したベースライン調査とデータリンケージを図り,データベースを作成した。主観的健康観は横断的な結果ではほぼ同様の結果であったが,縦断的なデータからは加齢に従って低下傾向がみられた。また,ベースライン調査で好ましいライフスタイルであった者では,現在の健康状態に違いがみられた。また,連携協力協定を締結している自治体から国民健康保険に加入している者の医療費データの提供を受け,それらの関連を探ったが,データリンケージが十分でなく,今後の課題が残った。さらに,自治体が実施する健康づくり事業への参加者の動向をもとに,コンピュータ・シミュレーションによって,どのように医療費の抑制が働くかを推計した。その結果,健康意識の向上によって,健康行動に変化が起き,効果が現れることが期待できるが,効果が見られるまでにはかなりの年数が必要となることから,継続的な取り組みが重要であることが示された。 分析対象とした自治体では,健康づくりプランの策定から10年が経過し,次の10年に向けた新たなプランの改訂作業が始まるが,本研究の成果はその際の基礎資料として活用することが可能であり,科学的なエビデンスに基づいた健康施策の実施に向けた取り組みが期待される。
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