研究課題/領域番号 |
22500635
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
市川 陽子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 准教授 (50269495)
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研究分担者 |
合田 敏尚 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 教授 (70195923)
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キーワード | 栄養学 / 生活習慣病 / バイオマーカー / 糖質吸収抑制 / グライセミックインデックス / レジスタントスターチ |
研究概要 |
糖質の消化吸収制御によって、ヒトの糖代謝、脂質代謝および慢性炎症状態にも改善がみられることを、関連指標を用いて検討した報告はほとんどない。本研究の目的は、メタボリックシンドローム予備軍の日本人における糖質吸収抑制食(低GI食)の継続摂取と、糖代謝および慢性炎症状態の各指標との関連を検証することである。平成22年度および23年度の試験により、低GI食を5週間継続摂取した介入群(健常成人男性(BMI≧23)では、体重、腹囲、BMIの有意な(p<0.01)減少、血中HbA1c値の低下傾向、血漿γ-GTP活性の有意な低下(p<0.05)が示された。血漿γ-GTP活性は、健常者における酸化傷害や炎症の指標、内臓脂肪面積と強く関連することが明らかになっていることから、低GI食の継続的な摂取により軽度肥満者の内臓脂肪が減少し、それに伴い耐糖能の改善あるいは炎症の抑制が起きたものと推察された。 平成23年度は上記に加え、低GI食調製の食品選択上、有効と考えられる食品中のレジスタントスターチ(RS)に着目し、米飯を主食とする食事において、RS摂取が食後血糖およびインスリン分泌に与える影響を、1日の変動で詳細に捉えることを目的にヒト試験を行った。健常成人9名を対象に、食事摂取基準とPFC比率に配慮した検査食を1日3食摂取させた。食事のみを対照群、食事直前にRS5g/食相当量のハイアミロースコーンスターチ原料の粉末を摂取する群をRS群とし、ランダムクロスオーバー試験を実施した。RS群では、昼食後30分以降の血糖値が緩やかに下降し、食後30~60分後のインスリン分泌量が対照群に比べて低く、緩やかに下降した。RSの摂取は食事中の糖の消化吸収を遅延し、インスリン分泌を増大させることなく食後の血糖上昇を抑制することが示唆された。現在、インクレチン(GIR,GLP-1)分泌量についても測定中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
低GI食の機序を検討する上で必要と考えられた、レジスタントスターチと日常食の同時摂取が血糖、インスリン、インクレチンの日内変動に及ぼす影響を調べるヒト試験を組み入れたため、当初23年度中に実施予定であった、低GI食、高GI食の単回摂取による血糖、インスリン、インクレチン値の比較試験が24年度にずれ込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、同意の得られた被験者に対して、栄養比率を一定とし、GIの異なる食品を用いて調製した低GI食1種類と高GI食1種類についての単回摂取試験を、1週間のウォッシュアウト期間をはさんでクロスオーバーで行う。検査食摂取前および摂取後30、60、90、120、180分の計6回、各3mlを肘静脈より採血し、得られた血液サンプルについて、血糖、インスリンおよびインクレチン(GIP、GLP-1)を、測定用キットを用いて測定する。 GIの異なる食事の摂取とインスリン分泌を促進する消化管ホルモンであるインクレチン(GLP-1,GIP)分泌量との関係を明らかにし、低GI食の効果をヒトのインスリン感受性に及ぼす影響のメカニズムから裏付けることを試みる。
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