介護老人保健施設に入居する認知機能低下がみられる高齢者(女性13名、年齢:85.5±6.0歳、HDS-R:14.3±8.0)を対象に、①フラワーアレンジ課題(生花やハーブを容器に入れたスポンジにさす)、②対象課題(フラワーアレンジと同容器に透明のつまみがついた画鋲をさす)、③ 日常生活時、の3場面でVASによる気分調査と唾液中クロモグラニンA(CgA)濃度を調査した。CgAは、身体的ストレスには反応せず、精神的ストレス負荷に対して特異的に上昇を示し、速やかに応答するストレス指標として注目される。 調査は、課題実施前の10:00と課題実施後の10:45(③も同時刻)に実施した。フラワーアレンジの材料準備では、誰の好みにも合うよう赤、白、黄、紫など花の色を多用にすること、なじみがある花を入れることを考慮し、香りによる覚醒や精神の安定を目的にローズマリー、アップルミントを用いた。 その結果、フラワーアレンジ課題では、CgAの有意な減少、VASでは精神的ストレスの有意な減少、高揚感の有意な上昇(p<0.05)がみられ、生花やハーブを用いたフラワーアレンジは、認知機能の低下した高齢者に対して、生理的、精神的ストレスの軽減、高揚感の上昇に有効であることが示された。 被験者13名を、居住階別に1群(軽度の認知機能低下群、7名、年齢88.6±5.7、HDS-R19.1±6.8)と2群(中等度の認知機能低下群、6名、年齢82.0±4.3、HDS-R8.7±5.1)に分けてVAS、CgAの変化を分析した。 その結果、1群ではフラワーアレンジ課題で高揚感が有意に上昇、2群ではフラワーアレンジ課題でCgAが有意に減少し、対照課題では有意に上昇した。VASは、両群とも有意な変化はなかった。このことから、特に中等度の認知機能低下群に対しては、フラワーアレンジ課題が生理的ストレス軽減に有効であるとみられた。
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