研究課題/領域番号 |
22500640
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研究機関 | 天使大学 |
研究代表者 |
佐藤 香苗 天使大学, 看護栄養学部・栄養学科, 准教授 (40405642)
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キーワード | 透析患者 / QOL / 栄養状態 / 受動運動 / 行動科学 / アドヒアランス / 教育プログラム / 教育メディア |
研究概要 |
日本では、約30万人いる慢性透析患者のうち、96.7%が血液透析患者で占め、その多くが栄養状態や運動機能、さらにはQOL(生活の質)の低下をきたしている。平成22年度には、患者の透析日の生活活動を高めることで、栄養状態およびQOLの向上が期待できる可能性を明らかにした。しかし、高齢化・透析の長期化により、患者の運動耐容能の低下は顕著であり、運動アドヒアランスが低いことが懸念された。そこで、本年度は患者の自発的な運動を誘発し得るプログラムをPDCAサイクルに基づき、次の手順で開発した。 1、活動姿勢(仰臥位、座位、立位)とタイミング(透析前・中・後)を構成要素として、5種類の運動(ストレッチ・マッサージ=受動運動)を立案した。2、健康な女子大生(21.1±1.9歳、延べ26名)を当該プログラムに参加させ、運動の自覚的強度をBorg指数(6~20)で評価させた。また、自記式質問紙法により、運動に対する「結果期待・効力期待・セルフケア期待・波及期待(全11問)」を尋ね、自己効力感(Self-Efficacy;SE)得点を得た。3、医療・健康教育スタッフ(看護師、臨床工学技士、柔道整復師ら)27名にこの運動を収録したDVDを視聴させ、SE得点を得た。4、運動強度は、心疾患患者の運動許容条件に関するガイドライン(2008)から、Borg指数13以下を適正とした。その結果、5種類の運動(25種類の基本動作)のうち、2種類の動作は関節への負荷が大きいと判断し、プログラムから除外した。5、運動に対するSE得点の分析結果をもとに、患者の身体能力や意欲に応じてプログラムを選択できるよう、段階別のコースを用意した。6、教育メディアとして、DVDを制作した。 以上から、患者の個別性にあわせたセミオーダーメイドの教育プログラムを開発でき、その運用には制作したDVDを活用することで、患者個々人の理解度や生活に合わせた自発的な学習を支援し、患者の運動アドヒアランスが高まることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1、初年度(22年度)に患者のQOLに関連する予測因子として抽出された、透析日における低強度運動処方として、「アクティブライフスタイルプログラム」を開発できた。 2、医療・健康教育スタッフとの十分な議論をとおして、患者の運動アドビアランスの向上を目指した教育メディアとして、DVDを制作できた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、制作したDVDを用いた実際の患者教育までには至らなかった。今後、開発した「アクティブライフスタイル教育プログラム」の運用によって、維持血液透析患者の栄養状態や運動機能、QOLが向上する可能性を検証する。
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