本研究の目的は、セルフレギュレーション理論をもとにした、教師のメンタルへルス改善の基礎理論構築にある。そのために,教師のメンタルへルスの状態及びメンタルへルス改善のための認知的な要因をアセスメントするための心理的な指標の作成を行い,さらにインターネットを活用した認知的なフィードバックを行うことにより,教師の心理的な変容がどのように起こるのかを検討することを目的とした。 本研究では,第1段階として,教師のメンタルへルスをアセスメントするための指標の作成を行った。特に,セルレギュレーションの機能の検討のため,ストレッサーとストレス反応を媒介するコーピング尺度及びセルフエフィカシー尺度の指標づくりを行った。コーピング及びセルフエフィカシーは,先行研究から,認知的な変容を可能とする指標であるため,本研究の心理モデルの媒介変数として作成した。第2段階では,作成した各心理尺度にもとづく心理モデルを検討するために,共分散構造分析を行った。その結果,媒介変数としてのコーピング尺度及びセルフエフィカシー尺度の有効性が認められた。これらの結果をもとに,第3段階として,インターネットによる認知的フィードバックのプログラムを作成した。 本研究では,教師の職業性ストレスの基礎理論を構築することに成功した。本研究で得られた知見は,今後,教師のメンタルへルス改善のため介入手段を講じる上で有効であることが推察される。しかし,インターネットによる介入プログラムのアクセス件数は少なく,一過性のフィードバック機能としては機能したが,特に縦断的なデータをサンプリングするための継続的なプログラム参加者を得ることが出来なかった。これには,時間の問題,連続してアクセスする煩雑さ,個人の特定に関する不安等の問題があったことが推察される。今後は,簡易的なフィードバック機能に特化したホームページの作成が必要である。
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