研究概要 |
先に、柔道場の畳(マット)における病原性微生物の分離同定および紫外線照射が極めて効果率的な殺菌法であることを報告した。 今回は、レスリング場マットの除菌について、紫外線照射の応用を試みた結果、柔道場と同様に、極めて効果的な殺菌効果が得られることを見出した。 レスリング競技はマット上で、多彩な技を駆使して行われる激しい格闘技である。そのため不潔なマットの使用は、化膿性疾患、耳介血腫などの障害も数多く報告されている。われわれはレスリング・マット上の細菌および真菌の個数の変化について、年間を通して追跡調査した。その結果、グラム陽性球菌の出現頻度がもっとも多く、分離された全菌数の87%がグラム陽性球菌であった。年間を通じ、マットから高頻度に分離された3菌種はMicrococcusおよびS taphy lococcus属で、グラム陽性桿菌はBaeillus属であった。従って、これらの細菌に対する殺菌効果の手法の検討を行った。 最初に,レスリング練習後、多くの施設で実行されている、オスバンやアルコールなどの薬品による消毒効果について追跡調査した結果、十分な殺菌効果はみられないことが分かった。今回は、レスリング場における細菌感染を防止する目的で、初めて紫外線ランプによる殺菌効果の検討を試みた。その結果、レスリング・マットでは、紫外線照射により、極めて強力な殺菌効果が得られることが明らかになった。マットは構造上、表面に陰の発生が皆無であること、紫外線を表面に均一に照射することが可能であり、殺菌は極めて有効であることが分かった。 今後、紫外線ランプ照射の殺菌は、従来の薬剤による消毒副生成物の生成がない、簡単に実行できる等の利点があり、レスリング場の殺菌に常用すべき極めて重要な手法であると思われる。一方,人体にも影響があるため、先ず安全マニュアルの策定が必要となろう。
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