抑うつは、さまざまな要因が影響しており、それらを考慮し対象に応じたアプローチが必要とされている。本研究では、地域および職域においてうつ状態の発現および生活満足度や幸福感などQuality of life(QOL)指標の変化を予測する因子について、疾患などの身体的健康状態、健康行動(運動、睡眠、喫煙、飲酒)、心理的要因(職業ストレス、ストレス対処能力)に加えて、社会経済的要因(所得、学歴、職種、婚姻などのソーシャルサポート)をも包含したモデルにおいて検討し、明らかにすることを目的とする。 本年度は3年間の研究期間の初年度であることから、本課題にかかる情報収集、および目的達成のための測定会を実施し、データベースを構築した。具体的測定項目は、個人属性、健康行動、社会経済的要因、首尾一貫感覚(SOC13項目)、睡眠障害、うつ(CES-D)、QOL(WHO/QOL26、主観的健康感、生活意欲・満足感、夫婦満足感)、身体活動量であった。地域においては高齢者を対象とし、上記に加え、認知機能、外出頻度(閉じこもり判定)、身体機能測定を実施し、933名からデータを得た。職域については、給与水準、職位、等価所得、職業性ストレスなどの調査を加え、できうる限り多くのデータを蓄積すべく調査を続行中である。来年度以降は、これらのデータベースの解析を通して、うつ状態およびQOLに関連する要因を検討すると同時に、同対象の追跡調査を実施し、うつ状態の発現およびQOLの変化を予測する因子について検討を行う。
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