本年度は最終年度であり、うつ状態の発現およびQuality of life(QOL)指標の変化を観察し、これらを予測する因子について検討することを目的としていた。そのため、地域在住高齢者を対象とした地域コホートにおいては、昨年度に引き続き縦断的検討のための追跡調査を実施し、最終的に517名から回答を得ることができた。新たに抑うつ症状が現れたものは29名と少なかった一方で、QOL(WHO/QOL 26)の平均得点には低下がみられた。データは現在も解析中であり、QOLの変化に関連する要因について検討している。職域コホートにおいては、昨年度構築したベースラインデータから横断的解析を実施した。抑うつ症状保持者は全参加者のうち18.8%であった。抑うつ症状を有する対象では、所得水準、SOC得点やQOL得点が有意に低く、職業性ストレス評価による心理的ストレス・身体的ストレス得点はいずれも高く、睡眠の質が悪い状況であった(性・年齢調整)。本年度は、職域コホートにおいても追跡調査を実施し、縦断的な変化を検討する予定であったが、先方とのスケジュール調整がうまくいかなかった面もあり、すべての調査を終えることができなかった。しかしながら、今後の追跡調査については実施合意が得られているため、今後も継続的に調査を実施し、職域における抑うつおよびQOLとの関連について検討を行う予定である。
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