研究概要 |
【目的】就寝直前の運動が睡眠の質の改善に有効か否かを検証するために、軽度睡眠障害者を対象に昨年度開発した低強度・短時間のストレッチ運動プログラムを用いて、睡眠脳波およびストレス反応を指標に運動の効果を検討した。【方法】対象者はピッツバーグ睡眠質問票のスコアが6点以上の女性7名(38~58歳)とした,実験は、温度25℃・湿度50%の室内にて11時~16時に行った。いずれの対象者も10分間の運動直後に床に就く施行(Ex)、および10分間の安静を保持した後に床に就く施行(CTR)を7日間以上の間隔を置いてランダムに実施した。測定項目は脳波および唾液中のコルチゾールとIgAとした。脳波測定に際して、頭部に4箇所、両耳垂に各1箇所、額に2箇所、顎に2箇所、両眼窩外側に各1箇所(計12箇所)電極を接着固定した。入床から90~150分間脳波を記録し、脳波解析は睡眠医療認定検査技師が担当した。入眠潜時、総睡眠時間、中途覚醒時間、睡眠効率、睡眠ステージを測定・評価した。唾液は運動開始5分前と睡眠実験終了直後に飲料水で口腔内を濯いだ後滅菌綿にて採取した。定量は外部検査機関に委託した。運動効果の検定には一般線形モデル-反復測定(GLM-RM)およびpaired t-testを施行した。【結果】唾液中IgAはGLM-RMにて有意な交互作用を認め、時間経過に伴いCTRおよびExのいずれも増加し、そのレベルはExで著明であった。唾液中コルチゾール及び睡眠内容に関する各指標は運動の効果を認めなかった。【まとめ】運動直後に床に就く施行において、睡眠終了直後にストレス緩和のマーカーである唾液中IgAの著明な増加を認めたことから、本研究で開発した低強度・短時間のストレッチ運動プログラムの就寝直前の実施は、睡眠の質に及ぼす影響は明確ではないが、唾眠時におけるストレスを緩和する可能性が示唆された。
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