研究概要 |
健康づくりのための睡眠指針に「定期的な運動習慣」が熟眠を得るひとつの手段であることが挙げられている。しかしながら、その詳細(運動プログラム:運動の強度、頻度、時間、および実施のタイミング)についての記載は少ない。また、わが国や欧米の先行研究において、不眠を改善するための運動の効果が報告されているものの一致した見解は得られていない。不眠に対する運動の効用が明らかになれば、不眠改善の手段の選択肢が増えることになる。我々はこれまでに低強度高頻度の運動プログラム(就寝前のストレッチ運動と日中の散歩、毎日実施、4週間)が主観的に不眠感を有する高齢者の睡眠を改善することを報告した(北畠ら2010,体力研究,108,8-17)。しかしながら、このような対象者の中には、睡眠状態が良好な者が含まれている場合があり、プログラムの効果が過少評価される可能性が考えられる。そこで、本年度は睡眠調査票(客観的指標)で不眠症状ありと判別された者を対象に前述した不眠改善運動プログラムの効果を検証した。その結果、包括的な睡眠感の指標が改善したことから、低強度高頻度の運動プログラムは不眠の改善に有効な手段のひとつである可能性が示された。もうひとつの目的は横断データを用いて、不眠の症状と身体活動状況(身体活動量、運動習慣など)との関連性を明らかにして、不眠症状別の運動プログラムを作成することであった。自治体のひとつの行政地区の65歳以上全員に対して郵送調査を行い、67%(661名中445名)の返却率を得た。回答での欠損部分を最小限にするため再調査を行い、現在データ入力中である。来年度はこのデータを解析して、睡眠と運動習慣の関連性を明らかにする。その結果をもとに、不眠の症状別の運動プログラムを作成し、その効果を検証する。
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