今年度の研究目的は不眠の症状と身体活動状況との関連性を横断データから明らかにすることと、不眠改善運動プログラムを作成し、無作為化比較試験を用いてその効果検証を行うことである。平成22年度にある市の1行政地区に居住する65歳以上の全高齢者661名に調査用紙を郵送で配布した。その後、民生員の協力により、436名(回収率67%、男性193名、女性243名)からの回答が得られた。偏りがより少ないと考えられるこの集団を用いて、不眠の症状と身体活動状況との関連性について現在解析を実施している。また、この集団ではピッツバーグ睡眠調査票を用いて、睡眠総合得点を算出し、5.5点以上を睡眠困難者とした(点数が高値ほど睡眠困難度が高いことを示す)。その結果、男性では26.9%(52/193名)、女性では37.9%(92/243名)が睡眠困難者であることが示された。これまでの全国調査による高齢者の睡眠困難者の割合は約3割との報告があることから、類似した集団であると考えられる。 これらの睡眠困難者に対して、睡眠改善教室への参加を促した。その結果、17名の参加を得た。メディカルチェックの後、この対象者を教室参加群と通常生活群との2群に無作為に割付けた。教室参加群は介入期間を4週間とし、1週間に1回当たり60分の教室に参加した。教室の内容は睡眠改善のためのレクチャーを15分、運動指導を20分、1人5分の個別相談で構成された。一方、通常生活群は4週間、普段通りの生活を過ごすように促され、その後、教室参加群と同様のプログラムに参加した。調査は各群の4週間を挟んだ前後で実施された。現在、介入効果については解析の途中である。
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