これまでに申請者らは、酸化ストレス応答に関する研究の中から、sequestosome1/A170(以下SQSTM1とする)という遺伝子を発見した。その生理的機能を明らかにするために、全身の遺伝子欠損(KO)マウスを作製したところ、SQSTM1-KOマウスは、摂食抑制因子レプチンのシグナル伝達異常によって過食となり、これにより肥満・2型糖尿病・高血圧といったメタボリックシンドローム様病態を呈することを明らかにしてきた 中枢におけるSQSTM1の重要性を明らかにするため、コンディショナルノックアウトマウス(SQSTM1^<flox/flox>)の作製を進めてきた。これをNestin-Creトランスジェニックマウスと交配することにより、脳特異的にSQSTM1を欠損したマウスを得た。現在、このマウスの病態解析(摂餌量の変化、体重増加、耐糖能、血圧など)を行っている。 これまでの知見からは、脳特異的なSQSTM1 KOマウスも全身KOマウスと同様に過食・肥満・血圧上昇となる表現型を示すことを予想している。その通りになった場合、SQSTM1は、中枢における摂食調節および血圧上昇に関与する因子であると明確に判断できる。このマウスがそうならない(全身KOマウスとは異なる表現型となる)場合は、脳以外の臓器におけるSQSTM1の欠損が過食・肥満・血圧上昇を誘導するという重大な知見を得ることとなる。この場合は、脂肪細胞の機能や分化能の変化、そして腎臓のNa再吸収等に着目して解析を進める。 中枢特異的SQSTM1欠損マウスを得るまで約6ヶ月を要する予定である。22年度の後半から同マウスの過食・肥満・血圧上昇の病態を比較しており、現在そのデータの解析中である。
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