これまでに申請者らは、酸化ストレス応答に関する研究の中から、sequestosome1 / A170(以下SQSTM1とする)という遺伝子を発見した。その生理的機能を明らかにするために、全身の遺伝子欠損(KO)マウスを作製したところ、SQSTM1-KOマウスは、摂食抑制因子レプチンのシグナル伝達異常によって過食となり、これにより肥満・2型糖尿病・高血圧といったメタボリックシンドローム様病態を呈することを明らかにしてきた。 中枢におけるSQSTM1の重要性を明らかにするため、コンディショナルノックアウトマウス(SQSTM1flox/flox)の作製を進めてきた。これをNestin-Creトランスジェニックマウスと交配することにより、脳神経特異的にSQSTM1を欠損したマウスを得た。平成23年度に引き続き、現在、このマウスの病態解析(摂餌量の変化、体重増加、耐糖能、血圧など)を行っている。その中で、体重の増加曲線は、全身性SQSTM1-KOマウスと似ており、対照群の野生型マウスと比べ週齢とともに体重増加が亢進してくることを明らかにしつつある。このことは、中枢神経系におけるSQSTM1の機能阻害が、肥満という表現型の発現に重要であることを示唆する。現在、耐糖能に変化はないか、脂肪肝などメタボリックシンドロームの病態に合併する表現型の出現はないか、一日当たりの摂餌量を制限した場合体重増加曲線が正常化するか等を調べている。血圧上昇の有無については、マウスの尾動脈圧測定からは明らかにすることは出来なかったが、全身性SQSTM1-KOマウスで認められた様に休眠期の血圧上昇が認められるかを、テレメトリーシステムを用いて血圧測定を行う予定である。
|