研究概要 |
サルコペニア(加齢性筋肉減少症)とは、老化に伴い骨格筋量の減少と筋力低下が生じる現象であり、高齢者のQuahty of Life (QOL)の低下をきたすものである。サルコペニアは、老化に伴う骨格筋の委縮や損傷に対する自己修復能力の低下(筋サテライト細胞の増殖、self-renewal、分化能力の低下)によって顕在化すると考えられる。筋サテライト細胞の機能に影響すると考えられる細胞内シグナル伝達経路はこれまで数多く報告されている。本研究の目的は、Glycogen Synthase Kinase-3β(GSK-36)/β-cateninシグナル伝達経路の関連に着目して、サルコペニア発症メカニズムの一端を明らかにすることが目的である。平成22年度は以下のことが明らかになった。 1.独自に開発したin vivo筋力測定装置を使用して四肢の筋力を測定した結果、老齢マウスの筋力は成獣マウスの筋力と比較して、およそ40%減少していることが明らかとなった。 2.凍結切片を作成し光学顕微鏡下で観察した結果、老齢マウスでは委縮した筋線維や肥大した筋線維が混在しており、筋線維径の大小不同が顕著であった。また、筋線維間や血管周囲の結合組織の増加が観察された。中心核をもった再生筋の増加も観察された。成獣マウスではこのような変化はほとんど観察できなかった。 3.遺伝子発現の解析の結果、老化に伴い特徴的な遺伝子の変化が観察された。酸化ストレスに関連する遺伝子(GADD45α,p21など)、筋委縮に関連する遺伝子(Atrogin-1,Muscle-specific RING finger protein 1など)、筋再生に関連する遺伝子(MyoD,myogeninなど)に変化が認められた。
|