研究課題/領域番号 |
22500658
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
我妻 玲 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特任助教 (00347121)
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キーワード | サルコペニア / サテライト細胞 / 老化 / シグナル伝達 / 骨格筋 |
研究概要 |
サルコペニア(加齢性筋肉減少症)とは、老化に伴い骨格筋量の減少と筋力低下が生じる現象であり、高齢者のQualityofLife(QOL)の低下をきたすものである。本研究の目的は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3(glycogen synthase kinase-3;GSK-3)シグナル伝達経路の関連に着目して、サルコペニア発症メカニズムの一端を明らかにすることが目的である。GSK-3βはWnt/β-catenin経路の構成単位としてよく研究されており、筋サテライト細胞の増殖やself-renewalが促進されることが報告されている。しかしながら、老化による骨格筋のGSK-3βの活性制御機構については不明な点が多い。平成23年度は以下のことが明らかになった。 1.平成22年度に老齢マウスの四肢の筋力の低下および筋繊維の委縮を報告した。これは、収縮タンパク質が老化に伴い失われていることを示唆する。そこで収縮タンパク質(ミオシン重鎖とアクチン)量を比較したところ、幼若と成獣マウス間には差が認められなかったが、老齢マウスでは40%(ミオシン重鎖)、10%(アクチン)の減少が見られた。 2.GSK-3の活性制御は複雑であるが少なくとも以下のように行われていると考えられている。Akt/PKBやMAPKによりSer21位(GSK-3α)あるいはSer9(GSK-3β)がリン酸化を受け、GSK-3の活性は抑制される。骨格筋においてもGSK-3αとGSK-3βが発現している。特にGSK-3βは骨格筋細胞の分化や肥大に対し負の制御に関与していると考えられている。幼若マウスと比較して成獣マウスで10%、老齢マウスで60%程度GSK-3βのSer9のリン酸化レベルが低下していた。つまり、老化により骨格筋のGSK-3βの活性は上昇している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
あらかじめ幼若・成獣・老化マウスの骨格筋を大量に採取・保存していたため、サンプリング調整が容易であった。したがって当初の計画通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度では老齢マウスでGSK-3βのSer9のリン酸化レベルが低下していることを明らかにした。今後は、GSK-3βの活性を制御していると考えられるAkt/PKBやMAPK等の活性化レベルをイムノブロット解析により明らかにする。また、GSK-3βのターゲット分子についても検討し、老化した動物の骨格筋におけるGSK-3βの役割について検討する。
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