健診では主な動脈硬化危険因子を評価するが、経年的に頸動脈の内膜中膜肥厚(IMT)の進行を観察すると旧来の危険因子では説明できない症例が散見される。そこで我々は新たな危険因子として、脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインを検討し、さらに外因性リポ蛋白マーカーであるアポB48の検討も開始してきた。今回アポB48とともに、アディポサイトカイン制御に関連する酸化ストレス、糖代謝と関連するとされるFGF21、の評価を実施した。 1、 アポB48:男性262名でアポB48を測定。アポB48は喫煙者および飲酒者で高値を示した。アポB48はIMTと相関しなかったが、非肥満者でアポB48はIMTと有意な相関を示した。尚、アポB48はTGと大変強い相関を示すが、TGにはこの相関を認めなかった。以上よりアポB48は、生活習慣に関連し、特定健診で抽出されない集団での動脈硬化評価に有用である可能性を示した。 2、 酸化ストレスマーカー:男性109名で、TBARS法で酸化ストレス(LPO)を評価。既報のようにLPOは、多くのリスクに相関。BMIとは相関せず腹囲や内臓脂肪面積と相関した。1年後のリスクの進展との関連をみると、LPOは拡張期血圧とTGの変化に相関した。この相関は腹囲補正後も有意であり、酸化ストレスが脂肪蓄積と独立した生活習慣病予測マーカーとなる可能性を示した。 3、 FGF21:男性37名でFGF21および胆汁酸代謝に関連するFGF19を測定。FGF21は喫煙者で高値を示し、糖代謝マーカーの他、種々の危険因子と相関した。一方FGF19はBMIや危険因子の集簇と負の相関を示す傾向があり、検討を続けている。 尚、1、2については2011年3月の日本循環器学会に抄録を2題発表。今後、女性も含め解析を進め、これらマーカーから抽出された集団に保健指導を行い、これらマーカーの変化とIMT進展抑制を明らかにする。
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