研究課題/領域番号 |
22500663
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西田 誠 大阪大学, 保健センター, 准教授 (00379273)
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キーワード | 動脈硬化 / 特定健診 / 危険因子 / 生活習慣 / 酸化ストレス / アポ蛋白 |
研究概要 |
我々は一般健康診断で動脈硬化の指標として、頸動脈内膜中膜肥厚(IMT)の測定を行ってきた。そこで経年的に頸動脈IMTの進行を観察すると旧来の危険因子では説明できない症例が散見される。我々は新たな危険因子として、アディポサイトカインを検討し、さらに外因性リポ蛋白マーカーであるアポB48の検討も開始してきた。今回アポB48とともに、アディポサイトカイン制御に関連する酸化ストレス、糖代謝と関連するとされるFGF21のさらなる解析を生活習慣の検討とともに実施した。 1)経年的集積データからの動脈硬化関連因子の検索 データより古典的リスクを伴わないものを抽出し、IMT増加群(n=35)と非増加群(n=35)に分け、FGF21,酸化ストレスマーカーとしてTBARSを測定したが、両群間で有意差は認められなかった。 尚、リスクを伴うものをあわせて症例数を増やし検討すると、腹囲、BMI、内臓脂肪の増加がIMTの増加と有意な関連を示し炎症マーカーにおいて男女差が見られた(学会発表)。生活習慣では、喫煙が有意にIMTの増加と関連し、禁煙群でもIMTの増加が認められた(投稿中)。禁煙群では、禁煙期間が長いと炎症性マーカーは減少したが、喫煙年数が長いと炎症が強く、IMTが増加するものと推察された。これにより早期の禁煙指導の重要性が確認された。 2)内臓脂肪評価に基づく保健指導に有用な動脈硬化惹起因子の解析 TBARSは、内臓脂肪蓄積に基づくリスクの集積に深く関連したが、IMTとは直接の関連はみられなかった。生活習慣との関連では、アポB48は、TGより飲酒や喫煙での増加傾向が強く、外因性脂質マーカーとしてク)有用性が確認された(学会発表)。TBARSは、過食に気をつけない群、昼食や夕食が不規則な群で高値になり、運動より食生活との関連が強く表れた。またFGF21が喫煙で高値となっており興味深いところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動脈硬化に大きく関与する新たなマーカーの発見には至っていないが、アポB48が非肥満群で動脈硬化の独立した危険因子になることはすでに明らかにした。また、新規マーカーの生活習慣との関連を明らかにしていること、喫煙と動脈硬化進展の関連を詳しく明らかにしていることは、今後の保健指導へ大きく寄与できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
・新たなマーカーの測定対象を増やし層別化を行い、動脈硬化進展群をさらに明らかにする。 ・今回IMTに大きく関与するマーカーの発見にいたらなかったため高リスク群への生活指導介入は行えなかった。そこで従来行っている生活指導前後での血液採取を開始。レトロスペクティブではあるが、生活指導の効果の検討も行う予定である。 ・23年度から内臓脂肪測定装置を改良しており、来年度はさらに詳細なデータが期待できる。
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