研究概要 |
【背景と目的】2型糖尿病の教育入院の効果判定を通して2型糖尿病患者の血糖コントロールに関連する心理・社会的要因を明らかにする。【対象と方法】平成18年うち,文8月から平成20年10月までの間に教育入院となった20歳以上の2型糖尿病患者147例の書同意の得られた113例とその家族70例(食事療法の担い手)を対象として,入院時における患者のHbA1cなどの身体的因子,家族構成などの人口統計学的因子,ならびにGeneral Health Questionnaire-60 (GHQ-60)による患者・家族のQOLの評価,Family Assessment Device (FAD)による家族機能の評価に加え,教育入院前後においてZung Self-rating Depression Scale(SDS)による患者・家族の抑うつの評価,Zung Self-rating Anxlety Scale (SAS)による患者・家族の不安の評価,Diabetes Quality of Life (DQOL)による患者の糖尿病関連QOLの評価,Problem Areas In Diabetes mellitus scales (PAID)による患者の糖尿病治療に対する負担感の評価を行った。【結果】教育入院前後において,患者のSDSスコア(p<.001),SASスコア(p=.011),PAIDスコア(p=.001),家族のSASスコア(p<.001)が有意に低下し,患者のDQOLスコア(p<.001)が有意に上昇していた。多変量解析の結果,家族のFADスコア(情緒的関与)と患者のDQOLスコア改善度との間に有意な負の相関(p=.010)が,また教育入院前の患者GHQ-60スコア(社会活動障害)と教育入院6ヵ月後のHbA1cとの間に有意な正の相関(p=.017)が認められた。【考察】教育入院前の家族内の情緒的関与が適切であるほど教育入院後の患者QOL改善度が大きく,教育入院前の患者の社会活動が良好であるほど入院6ヵ月後のHbA1cが低値であったことから,家族機能を含めた社会的因子が患者のQOLおよび血糖コントロールに一定の影響を及ぼしていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の報告はいまだ中間解析結果であるが,一定レベルの結果が得られており,研究参加対象も100例を超え,解析するに十分なサンプル数となったため,研究サンプリングは本年度で終了した. 現在は最終解析を遂行するべくデータベースを構築中であり,来年度には確実にその結果を報告できるものと考えている.
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