研究概要 |
【背景と目的】2型糖尿病の治療に関して,標準化された評価尺度を用いて教育入院の効果を判定した研究報告は少ない。われわれは,教育入院プログラムの効果を判定することを目的とした前向き調査を立案し,現在も進行中であるが,その中間結果について予備的検討を行った。【対象と方法】広島県内のある地域基幹病院の糖尿病・代謝内科に2週間の教育入院となった20歳以上の2型糖尿病患者17例のうち,文書同意の得られた15例とその家族7例(食事療法の担い手)を対象として,入院時における患者のHbAlcなどの身体的因子,教育歴,職歴,家族構成などの人口統計学的因子の評価に加え,教育入院前後においてZung Self-rating Anxiety Scale(SAS)による患者・家族の不安の評価,Zung Self-rating Depression Scale(SDS)による患者・家族の抑うつの評価,Diabetes Quality of Life(DQOL)による患者のQOLの評価,Problem Areas In Diabetes mellitus scales(PAID)による患者の糖尿病治療に対する感情の評価を行った。【結果】教育入院の前後で,DQOLスコアが有意に増加し(p=0.023),家族のSASスコアが有意に低下していた(p=0.002)。PAIDスコア,患者のSASおよびSDSスコア,家族のSDSスコアに有意な変化は認められなかった。【考察】教育入院後に,患者の糖尿病関連QOLが改善し,家族の不安が軽減していたことから,当院の教育入院は患者・家族の心理社会的因子の一部に良好な影響を及ぼしていることが推測された。今回の検討では未だ症例数が少ないため,結果の解釈には限界がある。今後さらに症例数を増やして,教育入院の効果とその予測因子,さらには血糖コントロールに影響を及ぼす心理社会的要因を探っていく必要がある。
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