研究概要 |
圧受容体反射(baroreflex sensitivity ; BRS)は交感神経緊張に拮抗する生体の重要な迷走神経反射である。今回、我々はBRSの低下が2型糖尿病患者において、脳・心血管系イベントの予測因子としてのBRSに性差の関連があるかどうかを検証した。BRSは有意に男性より女性のほうが低値であった(9.26±6.0 vs.5.97±5.0msec/mmHg,p<0.0001)。BRS正常男性、BRS低下男性、BRS正常女性、BRS低下女性の4群に分けて検討してみた。Kaplan-Meier分析ではDepressed BRS Femaleが有意にmajor adverse cardiac and cerebrovascular events (MACCE)を多く発症していた(log-rank 15.63,p=0.0013)。比例ハザード分析ではMACCEに影響する因子として、男性においては有意なものは抽出されず、女性においては高尿酸血症とBRS低値が独立した寄与因子として抽出された。本研究において、女性でBRSが有意に低値となった明かな理由は不明であるが、BRSは2型糖尿病患者の特に女性の脳心血管イベントを予測できることが示された。魚油製剤投与の効果を調査するに先んじて、男女差について調べることは重要と考えた。なぜ糖尿病患者の虚血性心疾患の予後に性差が関与するのか、自律神経機能における性差、女性ホルモンの自律神経機能に与える影響など近年話題になっている研究に解明のヒントを与えるために重要性を持った調査と考えた。
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