【目的】近年、国民のメタボリックシンドロームへの関心は非常に高まっている。特に女性では閉経により脂質代謝異常症や動脈硬化症を惹起するが、閉経後、どれぐらいの時間経過でこれらが顕在化してくるのか十分に解明されていない。またメタボリックシンドローム予防には、肥満者では体重減少をはかることが第一義となる。しかしながら、体重減少は一般的には骨密度の低下を伴うことが多く、実際肥満は中高年女性の骨密度に対して保護的要因と考えられており、減量を伴う生活習慣への長期介入により、骨代謝にどのような影響があるのかはよくわかっていない。そこで、中高年女性を対象に骨密度に及ぼす体脂肪量とエストロゲン、レプチンの影響を検討した。【対象と方法】地域在住女性28名を継続対象、15名を新規対象とし体脂肪率、踵骨骨密度、血中エストラジオール、レプチンを測定した。【結果】対象の肥満度と体格はやせ20%、普通肥満32%、隠れ肥満34.5%、肥満4人12.5%であった。隠れ肥満群ではこれまでの傾向と同様にやせ群、普通群に比し、踵骨骨密度、及びレプチン濃度は有意に高く、逆にE2濃度は有意に低かった。hVD-SIF1多型別に踵骨骨密度を比較するとこれまでの傾向と同様にやせ群、普通群ではWT型>ヘテロ型>MT型の順で有意に高かったが、隠れ肥満群と肥満群では差がなかった。hVD-SIF1多型別に踵骨骨密度とレプチン濃度の関係を検討するとやせ/MT型群、普通/MT型群では踵骨骨密度とレプチン濃度有意に正の相関を示したが、隠れ肥満/MT型群と肥満/MT型群では有意な関連がなかった。【結論】やせ体型、及び普通体型の中年成人女性では腸管からのCa吸収の遺伝的影響を強く受けるが、隠れ肥満や肥満の体脂肪率の高いの中高年成人女性では、脂肪細胞におけるレプチンが骨密度維持に寄与することが示唆された。
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