(1) 脳組織におけるビタミンC動態の解析から、特異的局在および保持・再生機構の存在の可能性について研究した。ビタミンC生合成不能ODSラットおよびその正常動物を用いて、潜在的ビタミンC欠乏状態が惹起されるビタミンC投与量を設定し、その時の血中濃度と脳内濃度の変化を解析した。ODSラットの飼育においてはビタミンC 1mg/mlを含む水の投与が推奨されているが、この条件ではヒトの潜在的ビタミンC欠乏状態のモデルになることを証明した(この成果については、現在論文作成中である)。また、脳には特異的な輸送・保持機構が存在することを既に確認しており、免疫細胞における取り込み機構(論文発表済み)と比較しながら、それぞれの投与状態における輸送タンパクの組織特異的発現の差異を分子レベルで解析した。この結果から加齢・老化時の潜在的ビタミンC欠乏状態のモデル動物を作成し、これを用いて神経細胞障害防護について研究する基礎を固めた。 (2) ビタミンCの神経突起伸展促進作用や神経細胞保護作用を細胞レベルで解析し、神経回路網の構築や再生への働きについて研究した。未分化神経細胞(ラット副腎髄質褐色細胞腫PC12細胞)を用いて、神経栄養因子による突起伸展率を測定し、神経再生賦活や細胞障害について評価した。その結果、安定型ビタミンC誘導体の添加により神経栄養因子の神経突起伸展作用が増強されること、また過酸化物による神経細胞の酸化障害が抑制されることが認められた。これにより次年度に予定する神経細胞の各種酸化障害に対するビタミンCのストレス防御効果を解析する実験条件を確立した。
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