研究概要 |
(目的)骨格筋細胞内脂質はインスリン抵抗性の原因と考えられるが、骨格筋が脂質蓄積に対する「耐性」を持ち、インスリン抵抗性が生じにくいphenotypeが存在する。そこで、この「脂質耐性」の規定因子やメカニズムを詳細に検討することを目的とした。 (方法)糖尿病家族歴を有さない非肥満の健常人、長距離ランナーを対象とした。最大酸素摂取量は、エルゴメーターを用いた最大運動下での呼気ガス分析により測定する。体脂肪量はインピーダンス法(InBody)にて測定した。3日間の普通食(炭水化物 60%、脂質25%、蛋白質 15%)摂取後に空腹時の条件下で、下肢専用の表面コイルを使用した1H-MRS(東芝 VISART EX V4.40)により、前脛骨筋、ヒラメ筋の骨格筋細胞内脂質(IMCL)を測定した。これらの各パラメーターの測定後、外側広筋よりneedle biopsy を行う。その後、人工膵臓(STZ-22、日機装)を用いて、インスリン注入量100mU/m2/minの条件下で2時間正常血糖クランプ検査を行い、最後の15分の糖注入率を計算し、インスリン感受性の指標とした。 (結果)健常者の中でIMCLが蓄積していてもインスリン感受性が良い者(H-GIR)、感受性が低い者(L-GIR)を抽出し、両者の骨格筋遺伝子発現レベルを比較した所、H-GIR群で有意にlipid oxidation (CPT1, HADHB, ASCL, ACC2, PDHa, ATGL)、lipid uptake (CD36, FABP)に関連する遺伝子群が増加していることが明らかとなった。長距離ランナーではH-GIR群と似た遺伝子発現パターンを有していた。 (考察)挙げられた遺伝子群が、脂質耐性に関わっている可能性が示唆された。
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