[研究成果の具体的内容] 高脂肪食負荷肥満マウスを用いて、脂肪摂取行動および脳内食報酬系中枢の神経機能の変化に関して研究を行った。肥満マウスの食行動を評価し、脳内食報酬系中枢である中脳腹側被蓋野(ventral tegmental area : VTA)ドパミン神経機能の変化に関して電気生理学的検討を行い、以下の2点を明らかにした。 (1)肥満マウスは、非肥満マウスに比べて脂質含有量の多い食餌を有意に好んだ。 (2)肥満マウスのVTAドパミン神経の自発活動には機能変化はみられなかったが、ドパミンD2自己受容体を介したドパミン神経自己抑制機能が約10分の1に低下していた。 [研究成果の意義と重要性] 摂食中枢である視床下部における神経機能に関する電気生理学的研究成果は、これまでにも存在する。本研究は、脳内食報酬系神経機能に肥満がどのような影響を及ぼすのかを世界で初めて電気生理学的に明らかにした。特に、VTAドパミン神経のD2自己受容体の機能低下が肥満で生じているという発見からは、既存のドパミン関連薬剤を用いた新規肥満治療法の開発に関して有用な知見が得られる。
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